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或る秋の午後
水に映る空 |
故郷にいとはしたなき女
「先生何か津田文学
に書いてくださいな」といった
その後その女にあった時
「先生あんなつまらないものを
下さって ひどいわ」といはれて
がっかりした
その当時からつまらないものに
興味があったのでやむを得なかった
むさし野に秋が来ると
雑木林は恋人の幽霊の音がする
名前の思い出せない花 |
淋しい
古さびた黄金に色づき
あの大きなギザギザのある
長い葉がかさかさ音を出す
(西脇順三郎詩集「旅人かへらず」)
「故郷にいとはしたなき女」。まるで伊勢物語だ。
私はこの詩が昔から大好きです。
歩く |
「つまらないもの」をきらう女は、女の本質を突いていて、
つまらないものにしか興味と詩的なものを感じられない詩人とが
対比されていて、実に面白いのである。
野原を歩く |
櫟の黄葉を見に行こう。
昔、この詩の通り、むさしのを歩いた。
武蔵野は淋しかったのを思い出す。
朝から手紙を書く。「山中さんを支援する会」の通信に寄稿してくださった方々に。
郵便を出しに行こうとしたら、ちょうど、玉稿を依頼していた方が直々に原稿を持参してくださった。
こちらが頂きに行くといったが、持っていくとおっしゃっていたのに対し、やはりもらいに行かなきゃ失礼だと話していた矢先、お越しになったのだ。
なんとありがたいこと。
お忙しい中、一寸でもと言って上がっていただきお礼を申し上げた。
市政から県政から万般に通じた方である。感謝、感謝!
午後は、「山中さんを支援する会」の仕事をした。
一日中降らず降らずみのお天気。
井伏鱒二の、漢詩の訳詩を「厄除け詩集」から。思い出したので。
聞雁(雁を聞く)
井伏鱒二
ワシガ故郷ハハルカニ遠イ
帰リタイノハカギリモナイゾ
アキノ夜スガラサビシイアメニ
ヤクショデ雁ノ声ヲキク
ああ、なんて飄々たる、そして人生の哀感の極み。
それでいて、なんというアイロニー。
「ワシガ故郷」 「ヤクショ」 がいいなあ!
夜の「雁」も、哀愁がただよう!
夕食:サバの煮つけ。
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