2015年9月25日金曜日

雑木林



43

或る秋の午後
水に映る空
小平村の英学塾の廊下で
故郷にいとはしたなき女
「先生何か津田文学
に書いてくださいな」といった
その後その女にあった時
「先生あんなつまらないものを
下さって ひどいわ」といはれて
がっかりした
その当時からつまらないものに
興味があったのでやむを得なかった
むさし野に秋が来ると
雑木林は恋人の幽霊の音がする
名前の思い出せない花
櫟(くぬぎ)がふしくれだった枝をまげて
淋しい
古さびた黄金に色づき
あの大きなギザギザのある
長い葉がかさかさ音を出す

(西脇順三郎詩集「旅人かへらず」)



「故郷にいとはしたなき女」。まるで伊勢物語だ。
私はこの詩が昔から大好きです。


歩く


「つまらないもの」をきらう女は、女の本質を突いていて、
つまらないものにしか興味と詩的なものを感じられない詩人とが
対比されていて、実に面白いのである。


野原を歩く



櫟の黄葉を見に行こう。

昔、この詩の通り、むさしのを歩いた。
 
武蔵野は淋しかったのを思い出す。







 
朝から手紙を書く。「山中さんを支援する会」の通信に寄稿してくださった方々に。
 
 郵便を出しに行こうとしたら、ちょうど、玉稿を依頼していた方が直々に原稿を持参してくださった。
 
 こちらが頂きに行くといったが、持っていくとおっしゃっていたのに対し、やはりもらいに行かなきゃ失礼だと話していた矢先、お越しになったのだ。
 なんとありがたいこと。

 お忙しい中、一寸でもと言って上がっていただきお礼を申し上げた。
市政から県政から万般に通じた方である。感謝、感謝!

午後は、「山中さんを支援する会」の仕事をした。

一日中降らず降らずみのお天気。

井伏鱒二の、漢詩の訳詩を「厄除け詩集」から。思い出したので。





  聞雁(雁を聞く)

         井伏鱒二


ワシガ故郷ハハルカニ遠イ

帰リタイノハカギリモナイゾ

アキノ夜スガラサビシイアメニ

ヤクショデ雁ノ声ヲキク



ああ、なんて飄々たる、そして人生の哀感の極み。
それでいて、なんというアイロニー。
「ワシガ故郷」 「ヤクショ」 がいいなあ!

夜の「雁」も、哀愁がただよう!



夕食:サバの煮つけ。












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