2016年4月3日日曜日

柿の芽ぶく一日

人知れず咲くやぶ椿
4月3日(日)

  春といふ

春といふ
春といふ
誰がいふ
月出でて
日も昏れぬ
月出でて
雲はだら
されど今宵は春の夜のすずしの幕の
幔幕がしつとりたれて
けりけりと
けりけりと水のほとりに鳴く蛙
ああ遠蛙
初蛙
旅人よ
故郷へ
旅人よ
故郷へ
なつかしいわがネコ その名もヒョウ君
かへるべもなき野のうへに
月出でて
ものの香や
けりけりと
またけりけりと
ああ初蛙
遠蛙
春といふ
春といふ
誰がいふ
けりけりと
けりけりと水のほとりに鳴く蛙

  (三好達治「駱駝の瘤にまたがつて」より)


 もうすぐ、遠田のかはづが鳴き始める。田んぼに水が張られたら、一斉に鳴きだすのだ。

 さて、一人で留守番の一日だった。朝三時からあったバルセロナとレアルマドリードのクラシコの録画を、一人で見たのだ。最高の試合だった。レアルを応援しているから。もちろんレアルが勝ったのだ。

 午後は、書斎の片づけのために、文庫本だけを収納する本箱を作った。約6時間の仕事で、形あるものが作りだせた、形あるものを作り出すのは楽しい。

 午後、知人が自分の山でとった筍をたくさん持ってきてくれた。
おいしかった。

独りで一日、曇天の中、たれこめて過ごした一日だった。

2016年4月2日土曜日

お花見の下見

4月2日(土)


           閑雅な午前

ごらん まだこの枯木のままの高い欅の梢の方を
その梢の細いこまかな小枝の網目の先々にも
はやふつくらと季節のいのちは湧きあがつて
まるで息をこらして静かにしてゐる子供達の群れのやうに
そのまだ眼にもとまらぬ小さな木の芽の群衆は
お互に肘をつつきあつて 言葉のない彼らの言葉で何ごとか囁きかわしてゐる気配
春ははやそこの芝生に落ちかかる木洩れ陽の縞目模様にもちらちらとして
浅い水には蘆の芽がすくすくと鋭い角をのぞかせた
ながく悲しみに沈んだ者にも 春は希望のかへつてくる時
新しい勇気や空想をもって
春はまた楽しい船出の帆布を高くかかげる季節
雲雀や雀もやがて遠い国からここにかへつてきて
私たちの頭上に飛びかひ歌ふだらう
菫 蒲公英 蕨や蕗や筍や 蝶や蜂 蛇や蜥蜴や青蛙
やがて彼らも勢揃ひして 陽炎の松明をたいて押寄せてくる
ああその旺んな春の兆しは四方に現れて
眼に見えぬ霞のやうに棚引いてゐるのどかな午前
どことも知れぬ方角の 遠い遥かな空の奥でないてゐる鴉の声も
二つなく靉靆として 夢のやうに 真理のやうに
白雲を肩にまとつた小山をめぐつて聞こえてくる
ああげに季節のかういふのどかな時 かういふ閑雅な午前にあつて考へる
ーーー人生よ ながくそこにあれ!
                  
                    (三好達治「一点鐘」より)



シデコブシが近所に咲いていました
朝から晴れる予定だった、しかし、曇り。
先日夏ミカンを持ってきてくれる近所の人がいて、面倒だなと思っていたのですが、ご近所で我が家のマーマレードが評判になっているのかと思い、仕方なく頑張って朝から作りました。
途中、四日市に行く用事ができて、帰ってお昼食べてから、薄日のさす中、お花見に行きました。二時間のお花見ツアーでした。
来週来客の予定で、山桜を見に行く計画があるので、その下見に行ったのです。山桜もソメイヨシノもきれいでした。


くっきりと水仙が咲き乱れていました、ワーズワースになったよう
今日の朝日新聞で、
最高裁人事というタイトル
の記事に、
津地裁の主席判事の坪井宣幸氏が、名古屋地裁の
主席判事に異動されたと
載っていました。


下見の桜はまだ4分咲きでした
坪井氏は、山中保一さんの裁判の裁判長だった人です。山中さんの訴えを棄却
した方です。

坪井氏に一言申し上げます。
今後は、証拠証言を客観的公平に事実認定をされて、その事実に基づいた判決を出してもらうように切にお願いします。



そして、裁判審理の度重なる延期は絶対にしないでください。切にお願いします。



亀山城の桜は満開です


2016年4月1日金曜日

ヒョウ逝きて一年

4月1日(金)
コブシ、我が庭に雨に打たれ、今日。

  山なみとほに

山なみ遠(とほ)に春はきて

こぶしの花は天上に

雲はかなたにかへれども

かへるべしらに越ゆる路

   (三好達治「花筐」より)

「かへるべ」の「べ」は「へ」に同じ。
接尾語「へ」で、「~の方、~のあたり」の意味ですから、帰るべき方向、の意味です。

「しらに」は、「知らないで」の意味。「に」は打消しの「ず」の、奈良時代には連用形に「に」という形があった、それなんです。

三好達治の、古語の感覚は相当なものです、感服します。



 今日は久しぶりの雨です
桜はまだ固い蕾の鈴鹿ですから、散る心配はありません。
今日は我が家の愛猫ヒョウの一年の命日です。
庭のこぶしの木の下に墓があります。

 今日から朝日新聞に「吾輩は猫である」が連載始まりました。

 今日から朝日新聞の「天声人語」筆者は、福島申二さんに代わって山中季広さんになりました。
山中氏の、今日の「天声人語」、がっかりでした。

 福島さんはこれまで、よく健筆を振るわれて、権威権力のおごりと虚妄に警鐘を鳴らしてこられました。9年間、「天声人語」、福島さんご苦労さんでした。
コブシ樹下、ヒョウの墓
福島さんは、鈴鹿の神戸(かんべ)高校出身。同校山岳部出身。

 

 さて、わが「天声豹語」、相も変わらず「詩」でお茶を濁していますが、ネコの故ヒョウともども、よろしくお願いします。